最後の輝き!ムーンV花道に引退へ
「ジャパンカップ・G1」(25日・東京)、まさにパーフェクト・エンディング-。岩田騎乗の5番人気アドマイヤムーンがゴール前の大接戦を制し、不利に泣いた天皇賞・秋(6着)の雪辱を見事に果たした。オーナーのダーレー・ジャパン・ファーム代表・高橋力氏はレース後、このまま引退し種牡馬入りすることを表明。ラストランを最高の形で締めくくった。頭差2着にポップロック。断然の1番人気に推されたメイショウサムソンは3着に敗れ、武豊の今週重賞4勝の新記録達成はならなかった。
勝利の瞬間、込み上げてくる涙を抑え切れなかった。「もう1度やらせてほしい」-他馬の斜行のあおりをモロに受けた悪夢の天皇賞・秋から4週間。岩田とアドマイヤムーンの勝利に対する熱い気持ちは、ほかの誰よりも勝っていた。盾で味わった悔しさをすべて府中のターフにぶつけた先には、パーフェクト・エンディングが待っていた。
力と力がぶつかり合った直線の攻防、岩田ムーンは内々から一気にスパート。早めに先頭に躍り出た。外から伸びる1番人気のメイショウサムソンを振り切ると、馬場の真ん中から1完歩ごとに迫ったポップロックの強襲も見事にしのぎ切った。上位3頭は時計差なし、わずか頭、首差。3度目のG1タイトルは、まさに執念でつかみ取った。
鞍上のファインプレーも光った。最初のコーナーで前がゴチャつき、下げざるを得ない形に。「そこで馬が怒ってしまった」と振り返ったが、その後は冷静にインでじっと我慢を決め込んだ。前半千メートル通過は60秒1。スローペースに苦しみながらも直線まで辛抱を重ねて、末脚を爆発させた。「みんなは外に出そうとしていたけど、僕は逆を狙って」と迷わずインへ。「レース前から考えていた。いいレースができたと思う」と、この日ばかりは自分自身の騎乗ぶりを褒めた。
岩田自身、これまで東京コースの攻略に苦しんだ。「G2もG3も勝てなかったけど、ようやく体に染みついてきた」。東京でのうれしい重賞初制覇が、G1のビッグタイトル。松田博師も手放しで喜んだ。「いつもよりゲートが良かったし、位置取りも良かった。抜け出しが少し早いかなと思ったが、持ってくれて良かった」と人馬を称えた。
7月にJRAの馬主登録をしたダーレーJFは、今回が初勝利。わずか4カ月でG1タイトルを手に入れたが、代表の高橋力氏はジャパンCを最後にアドマイヤムーンを引退させることを表明した。「すばらしいパフォーマンス。これで次へ送り出すことが私の務め。責任を果たせてホッとしている」と、しみじみ語った。
近藤利一氏から約40億円で購入。種牡馬としての価値を高めようと臨んだ秋の天皇賞だったが、直線での不利もあり6着と敗れた。「すごくショックだった。このまま引退させるのでは(種牡馬としての)インパクトが違う。トレーナーとも相談し、私の“カン”ピューターも駆使して」あえて距離に不安のあるジャパンCへ参戦した。
馬体の回復を待ち、北海道日高町富浜のダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックスで種牡馬入り。種付け料は500万円だが、この勝利で人気は急騰しそうだ。
アドマイヤムーンの前オーナー・近藤利一氏も歓喜の輪に加わった。「天皇賞で悔しい思いをしたからな。ここで強いムーンを見せられたことがうれしい。ジョッキーには5番手ぐらいで、と指示したんだ。責任を果たせてすごくよかったよ」と安どの表情。「(オーナーとして制した)宝塚記念の時よりもうれしい。だけど、(松田博)調教師が一番うれしいんじゃないかな」と、今回の勝利でJRA重賞40勝目を飾ったトレーナーの頑張りを称えていた。
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